理系の高校生にとって避けて通れない科目の1つに物理があります。高校で学ぶ物理は非常に難易度が高いものもあり、勉強法や教材を間違えると大変に苦労します。
実はこの私も、物理の授業が始まった高校2年の春に、とても苦労しました。その後試行錯誤を経て、物理を得意科目にすることができましたので、今回は私が実際に実践して効果が出た、おすすめの勉強法と教材をご紹介します。
全ての教科で共通の、「教材選びかたのコツ」については、以下の記事で詳しく解説しています!
高校物理のおすすめ勉強法
物理の基本は、原理の理解です。これが、全てです。
何が言いたいかと言うと、「原理を理解できていれば、難問も解ける。逆に、原理を理解できていなければ、簡単な問題も解くのは難しい」ということです。したがって、「まず徹底的に原理を理解する」というのが、基本的な物理の勉強戦略になります。
物理という科目の特徴
具体的な勉強法については、後ほどご説明しますが、一旦ここで受験科目全体における物理の特徴を考えてみましょう。
受験科目には、暗記で乗り切れるものと、そうでないものがあります。もちろん、勉強の基本は暗記ですから、全ての科目において暗記が必要ですが、その重みは科目ごとに差があります。例えば、英語や社会などは、暗記の要素がかなり強い科目と言えます(もちろん高度なレベルではこの限りではないでしょうが…少なくとも大学受験レベルでは、ほぼ暗記と言っても良いでしょう)。
対して、物理は非常に「原理」を重視する科目です。個人的には、「暗記で乗り切れない科目ランキング1位」は物理だと考えています。
超難関大学(東大、京大、東工大など)の物理の問題を見て頂ければわかりますが、難しい物理の問題というのは、「さまざまな要素が複雑に絡んでいて、一見すると何をやっているのかよくわからない」、というものが大変多いです。(余談ですが、数学の場合は、「問題設定は非常にシンプルだが、実はめちゃくちゃ難しい」という難問が多いので、ここは物理と違うところです)
このような問題を解くときは、「まず、複雑に絡み合った要素から、いま注目すべきポイントを見ぬき、1つ1つ処理する」という作業を行うことになります。このとき、原理を理解しているかどうかで、この作業がスムーズに行われるかどうかが決まります。逆に、原理を理解せずにパターン暗記的な勉強をしていると、「こんな問題設定は知りません!」となって終了します。
もちろん、パターン暗記が全く無意味なわけではありません。ただ、これで対応できるのは、大学入学共通テスト(昔のセンター試験)のレベルがギリギリかと思います。一方で、原理を理解していればこのレベルは余裕で満点を取れます。時間が足りなくなるということも、ありえません。
具体的な勉強法
まずは「非常に基礎的な問題を繰り返し解く」ということを徹底してください。
もし物理の成績が伸び悩んでいるのであれば、間違っても、「やや難しめの問題を解く」「解いた問題数を重視して、やみくもに解きまくる」というアプローチをしてはいけません。何を隠そう、私は最初にこれを行って大失敗しました。そして、このやり方で苦労している高校生を何人も見てきています。
大切なのは、基礎的で簡単な良問を何度も解き、基本的な原理を徹底的に理解することです。応用問題を解いていると、あまり本質ではない部分(問題を難しくするために変にイジっている部分)に気をとられて、基礎がおろそかになりがちです。
この時、できる限り、「問題で行われている実験を、頭の中でイメージする」ということを行ってください。この時、原理がしっかり理解できていれば、問題中で何が起こっているのか、スムーズにイメージできるはずです。「何が起こってるかさっぱりわからん!」という時は、原理の理解が不十分です。問題の解説をしっかり読み、それで足りなかったら教科書やインターネットで調べてみましょう。いろいろな物理実験の動画をYoutubeで見てみるのも良いですね。
原理を理解し、基本的な問題が簡単に思えてきたら、徐々に問題のレベルを上げておいけば大丈夫です。原理が理解できていれば、難問にもそこまで手を焼かないでしょう。
まとめると、
ということです。
高校物理のおすすめ教材
大前提として、教材は人によって向き不向きがあります。なので、ここでおすすめする教材が全員にとって最適とは思いません。まずは実際に手に取ってみてください。そして、できれば実際に購入して数日使ってみてください。
合わなければ、そこで中断すれば良いのです。少しお金がもったいないですが、これくらいの投資は安いものです。
まずはこれ
まず初めにやるべき問題集は、
という特徴を持つ問題集です。
圧倒的におすすめなのは、旺文社から出版されている、「物理 入門問題精講」です。これは、高校時代の私を救ってくれた、私にとって神のような教材です。ここでこの教材とのエピソードをツラツラ書いても良いのですが…長くなりそうなので、この記事の最後に書きます。
基本問題が解けるようになったら
基本問題が解けるようになったら、徐々にレベルを上げていきましょう。おすすめは、旺文社から出版されている、「物理 基礎問題精講」です。
…いえ、旺文社の回し者ではありません。このシリーズは本当に良くできています。この「物理 基礎問題精講」が解けるようになれば、大学入学共通テストは余裕でしょう。早慶レベルも、かなりカバーできていると思います。というか、ほとんどの大学はこのレベルが解ければ合格圏内です。
もし余力があれば、是非「物理 標準問題精講」にもチャレンジしてみてください。東大や東工大を受けるのであれば、是非この問題集もやっておきたいところです。「標準問題」と書いてありますが、ありえん難しいです。でも、良問ぞろいです。
大学入試の直前になったら
まあ、志望校の過去問をやっておけばいいと思います(適当)
おわりに
物理は、大変重要で面白い学問です。仮に数学系や化学系、生物系、地学系に進んだとしても、物理の知識が必要になる場面は多々あります。ぜひ、早めに物理への苦手意識を克服し、物理の楽しさを感じてください。
追記:個人的なエピソード
私は、東京工業大学工学部で電気電子を学び、東京大学大学院工学系研究科では放射線を用いた医療診断システムの開発を行いました。言うまでもなく、これらは全て物理学の範疇になります。いまでこそ物理は専門科目ですが、最初から得意なわけではありませんでした。
私は物心がついた時(具体的には、幼稚園の年長くらい)から、将来は物理学の道に進むと決めていました。というのも、私の父が物理の研究者で、ぼんやりと「自分も似たようなことをやるんだろうなぁ」と思っていたからです。
なので、物理を勉強するのをずっと心待ちにしていました。小中学生のときは、理科の授業が物理の範囲だと、ものすごくテンションが上がりました。高校では、物理部に入部しました。高校2年生でようやく物理の授業が始まった時、やる気が満ちあふれすぎて体温が2000℃くらい上がりました。
しかし、物理の授業にまったくついていくことができませでした。
(チーン・・・)
授業を聞いても、先生の言ってることがさっぱり頭に入ってきません。問題集を開いても、全然解けません。最初の定期テストでは、絶望的な点数を取りました。
その当時、得意の数学や化学、生物学では、クラスで5位以内は当たり前、学年400人中、1桁を取ることもありました。「当然、物理ならクラス1位か2位くらいだろ」と高を括っていた私の心は、ボキボキの粉々に折れました。
そしてしばらくして、圧倒的な絶望感の中、「これは、根本的に物理の勉強法を変えるしかない!」と決心し、ゼロベースで、基礎の基礎から知識を再インストールすることに決めました。そこで出会ったのが、先ほどご紹介した、「入門問題精講」です。「とにかく、このめちゃくちゃ簡単な問題を徹底的に理解するところからやってやる!」と決めました。
この問題集は、高校で配られていた問題集よりもずっと優しく、解説が丁寧でした。1問、また1問と解き進めるにつれ、確実に物理に対する理解が深まっている感覚がありました。高校で配られた問題集は一切やらなくなりましたし、授業も聞かなくなりました(←コラ!)。とにかく、ひたすら入門問題精講に集中しました。
そして、入門問題精講に取り組み始めて以来、初めての定期テスト。運が良いことに、この時の物理のテストは歴代でもかなり難易度が高く、平均点が40点程度(100点満点)でした。
私は、1問間違いで95点、学年2位でした。
震えました。やっと、自分が進むべきと信じた物理への道が見えた気がしました。校内偏差値は79.0。そもそも私の高校の偏差値は70オーバーだったので、母集団を高校生全体にした偏差値は、とんでもないことになっていたと思います。満点が1人いたのは悔しいですが…(満点の彼は余裕で東大に現役合格していきました)
そんなわけで、何が言いたいかというと、
ということです。チャンチャン。